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第4回 極私的ディスク・ジョッキー考 その1〜そもそもDJって…〜

       (Special Thanks to Akira Ambo)

 2010年夏、神奈川県茅ケ崎のミュージック・ライブラリー&カフェBRANDINにトークショー・ゲストとして招かれた際、館長の宮治淳一さん(*)から「これにこだわってずっとやってきたのは、今はもう矢口くんぐらいしかいないんじゃないか」と言われたのが、とても強く記憶に残っている。”これ”とは音楽をラジオで紹介する職業としてのディスク・ジョッキーのこと。そう短くもない年月、ラジオでポップスを届ける仕事をしてきて、それではお前の職業はいったい何なのかと問われれば、「ディスク・ジョッキーです」と答える(名刺の肩書きもディスク・ジョッキー)。なお、本稿でのDJとは、今日においてより一般的に用いられるクラブDJではなくラジオDJを指す。

 ちょちょいとネットの百科事典などで調べると、ディスク・ジョッキーとはーディスク=レコード盤とジョッキー=競馬などの騎手との造語で、乗り手として音楽を自在に操る(=紹介する)仕事を指すラジオ用語だった。もちろん起源はアメリカで、1909年にカリフォルニアのサンノゼで16歳の少年レイ・ニュービーがラジオ放送のような形で音楽を紹介したのが歴史上最初のディスク・ジョッキー的行為だったようだ。言葉として用いられたのはぐっと時代が降りて1935年に、解説者ウォルター・ウィンチェルが最初のスター・アナウンサーとされるマーティン・ブロックに対して使って以降だという。なお、その時点までジョッキーの方は放送機器の操作スタッフを呼ぶ言葉だったようだ。むろん、これも諸説のひとつだろう。41年に米ヴァラエティ誌が印刷物で最初にこの言葉を使ったころには、より汎用が高まり録音物に限らず音楽を紹介する立場を指すようになる。それにはアメリカにおいてレコードなどに録音された音楽が放送で使用された際に、作品に関わったミュージシャンらがそこから報酬を得られるかどうか見解が分かれていて、その決着がつくまで、政府から独立して放送事業全般を管轄するFCC(=Federal Communications Commission)が生演奏をそのまま放送するスタイルを奨励したという背景もあった。結局レコードが一度発売されたら、それが放送で使用されても参加ミュージシャンがラジオ局などから報酬を得る法的権利は認められないことになる。
 
 い、いかん。調べ出したら掘り始めてしまった。ここ日本では60年代後半にAMラジオ局の深夜放送が人気を得たころ、ディスク・ジョッキーおよびその略語のDJが一般的な言葉となった印象が強い。元祖に位置づけられる糸井五郎さんや高崎一郎さん、福田一郎さん、そして亀淵昭信さん、八木誠さんといった偉大な先達が道を切り拓き、新しい放送文化を創造した。DJが、とりわけ若い聴取層の莫大な支持を得たのに注目したのであろう、フォーク・シンガーやTVタレントといった方々が70年代前半に深夜番組の多くを担当するようになった時期には、音楽を紹介することは第1義とは言えなくなり、もっぱらトークが主体となってDJではなくパーソナリティーと呼ばれることも増えた。それは今日のお笑い芸人のみなさんが中心となっている状況に通じている。DJという言葉がなくなりはしなかったけれど、それは特定の職業を示す言葉的なものよりも、ラジオ番組を担当していろんな話をするという行為そのもののイメージが強くなり、そして定着した<例:私、ラジオでDJもやってるんですよ、など>。世間的にはDJは、他にメインの肩書きがある人物がそれとは別に行なうサブの仕事のようである。
 私が敬愛してやまぬ、直近でやや上の世代でシーンを築いた渋谷陽一さん、伊藤政則さん、大貫憲章さんといった、音楽評論家として今日まで独創的なラジオ番組作りを通じて意義深い活動を続けて揺るがぬ支持を誇っている方々がおられるので必ずしもメインとサブの線引きが重要とは言えない。おこがましくも、その系譜を継いでいると私は勝手に思っている。ただ、私は音楽評論家と自ら名乗ることはない(この件、いずれ後述)。偶発的なきっかけで右も左も判らないままラジオの世界に関わり始め(第1回~第3回参照)、大分経ってから自分の仕事は”(ラジオの)ディスク・ジョッキー”であるという多少こだわりを伴った認識にたどり着いた。どうしてそこに到ったか、それはー 

もう少しつづく

(2013.12.12)

*宮治さんが2013年12月現在担当されているTBSラジオの『MUSIC 24/7 宮治淳一のNo Music, No Friday!』(毎週金曜 20時~22時)は、最高におもしろいので可聴エリアにお住まいの方にお薦めします。

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